税効果会計で将来加算一時差異か将来減算一時差異かを見分ける方法

米国会計

唐突ですが、今回は会計の専門的な勉強(日本の公認会計士やUSCPAなど)をしている人向けに書きます。

税効果会計の話で、一時差異項目が将来加算一時差異なのか将来減算一時差異なのかを、暗記に頼らずに出す方法を記します。

そもそもの経緯

会計関係のテキストを見ていると、税効果会計の章があると思います。その中では代表的な一時差異項目(減価償却費や前受収益など)がトピックごとに列挙されています。それに対応する問題集では繰延税金資産や繰延税金負債がいくらになるかを問う問題が出てくるのですが、「そもそもこれは将来加算一時差異か、将来減算一時差異か、どちらだっけ?」という疑問にぶつかる人もいるかと思います。

一番手っ取り早いのは暗記してしまうことですが、私は暗記が苦手…というか暗記はやる気が出ないのです!そのため、その場で導き出すことを考えます。「暗記科目が苦手」という理由で、私のように理系に進んだという人は一定数いるはず…。

見分け方

次の手順で、見分けが付きます。ある意味で原理原則に基づいて考え直すと言えます。ちなみに日本の会計基準と米国の会計基準の両方でこの考え方は使えます。

  1. 会計上の仕訳を考える
  2. 税務上の仕訳を考える
  3. 会計上の仕訳を税務上の仕訳と同じにするために、追加で切るべき仕訳を考える
  4. 金額に税率を掛けて科目を変換する。
    • P/L科目 → 法人税等調整額(deferred tax expense)
    • B/S科目 → 繰延税金資産(deferred tax asset: DTA) または 繰延税金負債(deferred tax liability: DTL)

例題1: 減価償却費

「とある固定資産の会計上の減価償却費は1,000千円だが、税務上の減価償却費は1,500千円である。繰延税金資産or負債はいくらになるか?ただし税率は40%とする。」

  1. まず会計上の仕訳を考えます
    • 減価償却費 1,000 / 減価償却費累計額 1,000
  2. 次に税務上の仕訳を考えます
    • 減価償却費 1,500 / 減価償却費累計額 1,500
  3. 1.の仕訳を2.の仕訳にするには、次の仕訳を追加で切れば良いと考えます
    • 減価償却費 500 / 減価償却費累計額 500
  4. 税率を掛けて、科目を変換してみます。(B/S科目が借方に来たらDTA、貸方に来たらDTL)
    • 法人税等調整額(deferred tax expense) 200 / 繰延税金負債(DTL) 200

例題2: 前受収益

「前受収益の入金が500千円あった。ただし税率は30%とする」

こういう問題だと、どうせ「会計上は収益は認識しないが税務上は認識する」というオチになるに決まっているので、次のように考えます。

  1. まず会計上の仕訳を考えます
    • 現預金 500 / 前受収益 500
  2. 次に税務上の仕訳を考えます
    • 現預金 500 / 売上高 500
  3. 1.の仕訳を2.の仕訳にするために、次の仕訳を追加で切ると考えます
    • 前受収益 500 / 売上高 500
  4. 税率を掛けて、科目を変換してみます。
    • 繰延税金資産(DTA) 150 / 法人税等調整額(deferred tax expense) 150

将来加算一時差異か将来減算一時差異か…

上記の手順を踏んで

  • DTLが出た → 将来加算一時差異 → 益金不算入か損金算入
  • DTAが出た → 将来減算一時差異 → 益金算入か損金不算入

となります。ただ…「将来加算一時差異か将来減算一時差異のどちらか?」などという問題は、試験では恐らく出ません!私自身が日米の会計士試験に合格したわけではないので説得力に欠けますが、私が知る限りはDTA/DTLの金額を求める問題の方が多いと思います。

終わりに

上記の手順で仕訳を切ることで、わざわざ覚えなくてもDTAかDTLかを出すことができます。分かりにくい問題も、まずは仕訳を切りましょう。

もっとも、一番良いのは自然と覚えてしまうまで問題を解くことなんですけどね!

ちなみに、日本の会計基準と米国の会計基準の差異を、米国での経理実務の話ではなく会計士の目線で、主要な論点について一冊で一通り解説している本は少ないです。私の探し方の問題かもしれませんが、以前大型書店で探したときに見かけたのはこの1冊だけだったかと思います。

PwCあらた有限責任監査法人 (著)