伊豆にある山光荘という宿に、2020年の春先(緊急事態宣言が出る前)に行ってきました。
ポイント
- つげ義春氏の作品のファンにとっては、50年以上前の『長八の宿』そのままの世界が残っている場所
- 「伊豆の長八」の鏝絵作品も見どころ
- 都会の喧騒を離れてのんびりするのにも良い
山光荘とは
西伊豆の松崎温泉にある旅館です。歴史ある建物であり、江戸の天才左官職人である伊豆の長八の鏝絵が残っている他、つげ義春氏の漫画作品『長八の宿』のモデルとなった宿でもあります。
https://www.jalan.net/yad371820/
伊豆松崎温泉はメジャーな温泉地ではありませんが、どこか懐かしい日本の雰囲気が残った場所であり、特に都市部に住む方にとっては心落ち着くことでしょう。
アクセス
松崎温泉の近くには電車は通っていないため、車を使うかバスを利用する必要があります。以下では車を使わず公共交通機関を使って行く方法を記します。
なお、以下の説明では「松崎」バス停を目指しています。実は地図をよく見ると、山光荘の最寄りのバス停は別にあるのですが、そちらは一部の路線しか通っていません。一方で「松崎」バス停はバスターミナルとなっており、複数の路線が乗り付けている他、小規模な観光案内所・トイレもあるため便利です。宿まで徒歩で15分ほどかかりますが、「松崎」バス停を目指すことをおすすめします。
静岡側から船とバスを使って行く場合
静岡の清水港から、伊豆半島の西側にある土肥港までは船が出ています。土肥港フェリーターミナルのバス停から、バスで40分程度で松崎バス停に到着します。そこから徒歩15分程度で山光荘に到着します。
東京から伊豆急下田を経由して行く場合
東京から伊豆急下田へは特急「サフィール踊り子」や「踊り子」が出ています。
伊豆急下田駅から松崎へはバスで1時間程度で行くことができます。松崎バス停から徒歩15分程度で山光荘に到着します。
予約方法
じゃらんで予約できます…が、なぜか本記事執筆時点(2020年6月)ではじゃらんでの予約が停止しています。2020年の春先の時点ではじゃらん経由で予約できたのですが。
じゃらんでの予約が停止している場合は、宿へ直接電話しましょう。
http://www.sankousou.com/index.html
私が宿泊しようとしたときは、1名宿泊の場合はじゃらんで長八の間は出てきませんでした。しかし、個人的な理由(後述)により、どうしても「長八の間」に泊まりたいと考えていました。その場合、宿に直接電話するとある程度柔軟に対応してもらえるようで、1名宿泊で長八の間を予約できました(1名利用時は若干料金が高くなります)。恐らく予約状況によって予約可否が変わるのでしょうか。
客室の様子
今回は長八の間という部屋を指定して宿泊しました。この部屋は土蔵をまるまる使った珍しいものであり、寝泊まりは土蔵の2階、食事は土蔵の1階で行います。
2階の窓のそばには、伊豆の長八が作った鏝絵の作品が残っています。
夕食は海の幸を多く取り入れたものになっています。
ちなみに、宿泊費の支払いにアメックスは利用できませんが、VISAカードは使えました。
つげ義春『長八の宿』の舞台
マイナーながらも一部で根強い人気を持つ漫画家である、つげ義春氏の1968年の作品に『長八の宿』というものがあります。山光荘の「長八の間」は、この『長八の宿』に出てくる部屋のモデルとなっています。今回、「長八の間」指定で宿泊したのは、私はつげ義春氏の作品のファンであり、ぜひともモデルとなった部屋を見たいと思ったためです。
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%95%B7%E5%85%AB%E3%81%AE%E5%AE%BF
実際に入ってみると…50年以上前の作品にも関わらず、予想以上に『長八の宿』の世界が残っているので非常に驚きました。廊下から蔵の中に入る場面や、部屋の状況は漫画のままでした(正しくは、漫画の絵がこの宿のママというべきか)。温泉の描写も実物に似ていたように思います。
『長八の宿』では旅館のパンフレットの話が出てきますが、描かれたものに近いものが実際に当時使われていたらしく、当時のパンフレットのレプリカがロビー横の部屋に展示されています。また、この宿の女将さんはつげ義春氏と今も交友が続いているらしく、つげ氏から送られた年賀状も展示されています。
ちなみに…女将さんによると、『長八の宿』を読んで興味を持ったつげ義春のファンが、作品発表から50年以上経った今も訪れるらしく(私もその1人ですが)、私が宿泊した日の近くの日もファンが予約していたとか。ファンの中には意外に若い人もいるらしいです。
※ 『ゲンセンカン主人』のモデルになった温泉地にも行ってきました。
伊豆の長八の鏝絵
江戸〜明治時代に活躍した入江長八(伊豆の長八)という左官職人の鏝絵の作品が、長八の間の窓などに残っています。
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%85%A5%E6%B1%9F%E9%95%B7%E5%85%AB
この伊豆の長八は、左官職人をしながら日本画を学び、左官で使う漆喰を特殊なコテで細かく造形することで絵を描いていました。実際に見てみると分かりますが、非常に細かく、(漆喰という材料を使っていることを考えると)1つの芸術作品にまで高められています。この技術は天才的と言っても良いレベルです。
山光荘の近くに伊豆の長八美術館があり、鏝絵作品や使った道具などを鑑賞することができます。一見の価値アリです。
http://www.izu-matsuzaki.com/publics/index/69/
終わりに
山光荘はかなり歴史のある建物であり、伊豆松崎温泉ののどかな雰囲気とあいまって、落ち着いた滞在を堪能できる場所です。次のような人におすすめします。
- つげ義春氏のファンの人
- 伊豆の長八の鏝絵作品に興味がある人
- 都会の喧騒を離れたのどかな場所で落ち着きたい人